ただの元彼


向こうから 見覚えのある小首をかしげる角度
絶妙さに堪らず息を漏らす
すれ違うまで あと10メートル

突然腕を組まれて 男は鼻の下を伸ばしている
気をつけろ 彼女は君に罠を張り巡らせた

僕のことなど知らないだろう
ただの元彼だ 名前はもうない
少し彼女に(かす)っただけの
ただの元彼だ 最初で最後だ
君は彼女を幸せにできるかい?

ゆっくりと 近づいてくる彼女に鼓動が跳ねる
楽しそうな会話が耳で騒ぐ
すれ違うまで あと1メートル

そろそろ顔の緩みを 戻したほうがいいと思うけどな
さすがだよ 彼女は僕に視線を送った

僕のことなど知らなくていいさ
ただの元彼だ 歴史に埋もれた
典型的な草食系の
ただの元彼だ 奇跡を逃した
僕は彼女を幸せにできなかった

何年も経ったはずなのに
髪形も服も違うのに
彼女と分かってしまう僕だから 振られたんだね

僕のことなど知らないだろう
ただの元彼だ 名前はもうない
少し彼女に擦っただけの
ただの元彼だ 最初で最後だ
君は彼女を幸せにできるかい?

僕のことなど知らなくていいさ
ただの元彼だ 歴史に埋もれた
典型的な草食系の
ただの元彼だ 奇跡を逃した
僕は彼女を幸せにできなかった

君は彼女を幸せにしてほしい