●夏休み
Aoki「リーダー明後日暇?」
Iz「明日から帰省するけど、つーかお前もだろ?」
Aoki「Junも暇?」
Jun「俺も帰省」
Aoki「だから明後日福岡で用事があるかっていう話や」
Iz「……特にないな」
Jun「俺も、ない」
Aoki「じゃあ、束音んとこ行こうや」
Iz「何言ってんだ、お前」
Aoki「ほら向こうで束音と会うことないやん? 家に行ってみたいなあって」
Iz「あほか。一人暮らしの女の子の家に行けるか」
Aoki「でも、束音いいってよ」
束音「気づかれませんでした?」
Aoki「ばっちりー」
束音(あれ? 何かIzさん疲れて……る?)
Iz「学生の街って聞いてたけど、あんま人いないんだな」
束音「今夏休みじゃないですか。この辺に住んでる学生ほとんど帰省してますよ。うちは部活があるから残ってますけど」
Iz「へえ、それはラッキー」
束音「Junさんお久しぶりです。こんなとこまでありがとうございます」
Jun「ああ」
束音(笑ってくれたあ! う、嬉しい)
Iz「部屋の片づけは済んだ?」
束音「頑張りましたよー。まあほとんどロフトに放り込んだだけですが……。Izさん大丈夫ですか? 何か疲れてません?」
Iz「……ああ。聞いてくれる? Aokiがさ、電車で行こうって言い出してな」
束音(何か想像つく……)
Iz「俺らは多少変装すれば大丈夫かもしれんけど、あいつは目立ちすぎだろ。それなのに電車で行くって聞かなくて、無理矢理タクシーに押し込んできたとよ」
束音「それは……ほんとにお疲れ様です」
Aoki「そうだぜ。Izひどいんだぜ。久々に電車に乗りたかっただけなのにさあ。Junまで止めるし」
Jun「当たり前だ」
Aoki「なあ、ひどくね?」
束音「……あ、ここです」
Iz「おー何か一人暮らし時代思い出すな」
束音「狭くて、汚い部屋ですが……」
Iz「あ、一応差し入れあるんだけど、冷蔵庫借りていい?」
束音「どうぞ」
Iz「っておい、束音! これはないだろ!」
Aoki(あ、呼び捨てした)
束音「何がですか?」
Iz「食材が一個もねえ」
Jun「……ひどいな」
Aoki「普段どんな食生活してん?」
束音「うーん、基本一日一食が多いですね。だって料理する時間ってもったいないじゃないですか。ただでさえ洗濯とか家事に時間取られるから。そんな暇があるならうちはもっと多くの言葉を書きたいです」
Iz「これはおじさん見過ごせないな。近くにスーパーある?」
束音「ありますよ」
Iz「よし、行こう」
Aoki「俺も、俺もー」
Iz「お前は駄目。Jun、捕まえといて」
Aoki「えー!」
Iz「束音ちゃん行くよ」
束音「え、え、え」
Aoki「うっわあうまそう」
束音「すっごーい……」
Iz「コンロ一つしかないから時間かかったけどな。こんなもんだろ」
束音「重ね重ねすみません」
Iz「いえいえ。こちらこそ」
束音「あ、どうぞ。座ってください。座布団ないですけど」
Iz「そこに座椅子占領してる奴がおるけどな。つか、それ束音ちゃんのだろ?」
Aoki「だって束音がいいって言ったんやもん。なっ?」
束音「お客様は神様ですから」
Jun「……料理が冷める」
Iz(お腹空いてたんだな)
束音「そうですね。頂きましょう」
Aoki「じゃあ僭越ながら私が。えーと……特に何も考えてないから、かんぱーい!」
Iz「乾杯」
Aoki「Junはいいよなあ、あんな美人な彼女がいてえ」
Iz(結構出来上がってんな)
束音「えっ、Junさん彼女がいるんですか?」
Iz「高校ん時からの付き合いだよな」
Jun「うん、まあ」
束音「羨ましいなあ」
Aoki「そういや、束音彼氏いないの?」
Iz(いたら男を部屋に上げないだろ)
束音「……はは」
Aoki「おおっと、何か痛いとこ突いちゃった感じ?」
束音「聞いてくれます? うちにも大学一年の時彼氏いたんですよー」
Iz(あれ? 束音ちゃんも軽く酔ってる?)
束音「結構頑張って尽くしたのに、自然消滅ですよ! ふわふわのオムライスが好きだって言うから練習したし、泊りに来る時は料理作ったし、今まで女物好きじゃなかったけど着てみたし……それなのに……何も言わずに去っていきがやった……」
Aoki「そいつ最低やな」
束音「あの腐ったみかんが! 思い出したら苛ついてきたし」
Jun(腐ったみかんって何だろ……)
Iz「束音ちゃん落ち着いて。運がなかっただけだよ。いつかもっといい男が現れるって」
束音「もう恋愛は当分いいです。うちは夢に生きるんです」
Aoki「えーもったいねえ。恋愛はええで」
束音「そういえば、お二人は彼女さんいないんですか?」
Iz「俺は今おらんよ」
Aoki「俺も」
束音「えー何でですか? もてそうなのに……」
Iz「何でだろうね? っていうか、束音ちゃんが思ってるほどもてないよ」
Aoki「Izは優しすぎるんや。自分の気持ちより相手の気持ち優先させるからなあ。嫉妬もあまりせえへんし。それで何回振られたことか」
Iz「浮気性のお前が言えることか」
束音「浮気性、ですか?」
Iz「ああ、こいつ一人に絞れないんよ。彼女できてもすぐ他に目移りするし、その上ばれても悪びれない」
束音(それはちょっと……)
Aoki「だって、色んな味味わいやろ?」
Iz「下ネタか。そうだ、束音ちゃん今のうち言っとくけど、こうやって気軽に男連れ込んだらいかんよ。何されるか分からんからね」
束音「えーうちに限ってそういうのないですよ。対象外ですもん」
Aoki「俺は束音とキスしたいで」
Iz「死ね」
Aoki「ってえ、Junまで!」
束音「いいですよ。します?」
Iz「こらこら。束音酔いすぎ」
束音「えー酔ってませんよ」
Jun「酔ってる。少し横になれ」
Aoki「あー束音とキスするチャンスやったのに……寝ちゃった」
Iz「お前、一回沈んどけ」
Aoki「ま、また今度すればええか」
Iz「やらせねえよ」
Aoki「まーまーゲームしようや。懐かしのスーファミ。お前をボンビラス星に送り込んでやるぜ」
Iz「俺が勝ったらワンカートン」
Aoki「じゃあ俺は新しいブーツ買ってもらおうっと」
Iz「負けねえよ」
Aoki「望むところ」
Jun(……眠いな)